相続コラム

2021年4月10日

【争続】遺言書を無視して、法定相続分で勝手に登記されてしまったら?~相続における旧法と新法の扱いの違い②~

〈事例〉

Aが死亡し、その相続人として、子BとC がいる。Aには唯一の不動産として、甲土地があった。Aは甲をBに相続させる旨の遺言をしていた。

Cが、甲について、法定相続分2分の1につきCへの共有持分登記をしたうえ(注)、Dにこれを譲渡した。この場合、Bは登記をしないで、権利の取得をDに対抗することができるか。

回答

〈Aの死亡が2019(令和元)年6月30日以前の場合=旧法〉

甲をBに相続させる旨の遺言は、特段の事情がない限り、遺産分割方法を指定したものであり、甲は、Aが死亡した時に、直ちに相続によりAからBへと承継される。これによる権利の取得は、登記をしないで、Dに対抗することができる(最判平14・6・10)。

 

〈Aの死亡が2019(令和元)年7月1日以降の場合=新法〉

「相続による権利の承継」は、遺産分割によるものかどうかにかかわらず、「(法定)相続分を超える部分」については、対抗要件を備えなければ「第三者」に対抗することができない(899条の2第1項)。

即ち、Bは、「甲をBに相続させる旨」の遺言がされたときでも、法定相続分を超える部分については、登記をしなければ権利の取得を第三者Dに対抗することができない。この点、旧法と異なるので注意する必要がある。

 

そこで、現実にどういう問題が発生するかといえば、Cから共有持分を買い取った第三者Dが、Bにその買取りを迫り、Bがこれを拒否すると共有物分割訴訟を提起するといったことが考えられる。現に共有持分を買い取る専門業者もいるようである。また、CがDに共有持分を譲渡しなくても、Cの債権者DがCに代位して共有持分登記を経由してこれを差し押さえ、競売にかけるおそれもある。

Bがこのような事態を防ぐためには、相続開始後、可及的すみやかに遺言書に基づいた登記をするとか、生前贈与により甲を名義変更しておくことなども対抗策として考えておくべきである。また、他の相続人の財産状態も確認しておいたほうがよい。

 

(注)戸籍謄本(故人の出生から死亡までのものと相続人全員のもの)、故人の住民票の除票、相続人全員の住民票、固定資産評価証明書を揃えて登記申請すれば、法定相続分に応じた共有持分登記が可能。特に、〈事例〉のように、Bに相続財産のすべてを相続させる旨の遺言があることを知ったCが遺留分4分の1では納得いかないとして法定相続分を確保しにかかる可能性がないとは言えない。

 

【弁護士 高木光春】

弁護士法人高木光春法律事務所

Category: 争続

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