2020年12月7日
【争続】親の面倒を見ていた子が、遺産となる預金をおろして「自分のもの」と主張したら?~相続における旧法と改正法の扱いの違い~
・被相続人・配偶者A
・子B ・子C
〈事例〉
被相続人が平成31年6月30日に死亡。配偶者A、子どものB及びCが相続人となった。遺産は、預貯金500万円、株式500万円、不動産(自宅土地建物)が1000万円であった。
被相続人から信用されていたCは、生前被相続人から通帳や金融機関の印鑑などを預かり、また、権利証や株式の保管をしていた。被相続人の死亡後、Cはすぐに金融機関を回って預貯金500万円を下ろし、自分の口座に振り込んでしまった。他方、被相続人と同居してきたAは自宅を取得したいと思っている。
この事例で、Cは被相続人の面倒を見てきたのだから、500万円はもらって当然だと言っており、さらに自宅は売却して株式分と合わせた1500万円の4分の1をもらうと言ってきかない。
AとBは、どうしたらよいか。
〈解説〉
1 旧法の適用
⑴ 相続改正法は、平成31年7月1日以後に開始した相続に適用されるので、本事例は、旧法が適用になります。旧法では、遺産分割の対象になるのは現時点で残っている遺産だけということになるので、結論的には、株式500万円と不動産1000万円だけが遺産分割の対象となります。従って、Aが相続分2分の1の750万円、BとCがそれぞれ375万円を取得することになります。すると、Aが自宅土地建物を取得しようとすると、BとCに代償金として125万円ずつ支払わなければなりません。
⑵ では、Cの処分した500万円はどうなるでしょうか。AやBとしては、遺産分割とは別に、Cに対して不当利得返還請求ないし不法行為に基づく損害賠償請求の民事訴訟を起こさなければなりません。
2 改正法では
〈事例〉で、被相続人が平成31年7月1日以降に死亡したとすれば、AとBの同意があれば、Cが処分した預貯金500万円が存在するものとして遺産分割の審判が可能。つまり、裁判所としては、Aが不動産を取得し、Bが株式500万円を取得、Cが預貯金500万円を取得するという審判が可能です。
【弁護士 高木光春】
Category: 争続